今回は、ウォーキングの中でも『歩数』というバロメーターが
あなたの未来にどう影響するのかを考察したいと思います。
ウォーキングが健康にいい理由はあげればきりがありません。
(くわしくは別記事の運動のサイエンスまとめをご覧ください)
長らく、ウォーキングは基礎疾患があって、軽度の運動しか
できない人にオススメするものだと認識していました。
完全な誤解です。
ライフスタイルメディスン(LM)を勉強すればするほど、
『運動としてのウォーキング』の重要性が浮き彫りになるのです。
もちろん、単純に考えて、人間が動物である以上、
食事・運動・睡眠が生存に欠かせないのは直感的に明らかでしょう。
ウォーキングが健康な人に与える影響についてのデータは
随時シリーズ化してお伝えしていきます。
ウォーキングの重要性
コロナによって、運動の重要性はさらに増しています。
コロナ太りはもちろんのこと、基礎疾患のある人の
コントロール状態はいろいろな理由で悪化傾向にあります。
健康な人でさえ、運動を控えたり、スポーツジムに行く習慣が
途絶えてしまって、体力の低下を実感する人も多いでしょう。
こんな時は、気軽にできて健康効果の高いものが、お勧めです。
ベイビーステップといって簡単でうまくいくことから始めるのが、
継続の秘訣です。継続は習慣につながり、未来への投資になります。
投資で最大の効果を得るのは、時間を味方につけることです。
というわけで、早速ウォーキングのメリットを『歩数』で考えてみましょう。
ウォーキングをするときに考えるべきポイントがいくつかあります。
実は、運動をプランニングするとき(運動処方といいます)の
基本ルールなのですが、FITTといって、以下の項目からなります。
- Frequency 運動頻度
- Intensity 運動強度
- Time 運動時間
- Type 運動の種類
今回のウォーキングに当てはめてみると、
- F 運動頻度:週に何回運動するのか?
- I 運動強度:ウォーキングの速さ、歩数、心拍数などの目標値は?
- T 運動時間:1回のウォーキングは何分くらい?
- T 運動の種類:ウォーキング
となります。
今回は気軽に計測できる『歩数』から、何がわかるのか?
という視点で考えてみたいと思います。
ウォーキングを『歩数』で切り取る
むかし『万歩計』をつけて歩くのが流行りましたが、ご存知ですか?
今はiPhone、Apple Watch、Fitbitなどのウエアラブルで
簡単にモニターできるようになったため、運動時間や歩数が
気になっている人も多いのではないでしょうか?
よく質問されるのですが、
- 1日1万歩って必要なの?
- 早歩きの方が体にいいの?
なんて疑問が出てきます。
ここでは、2020年3月に発表されたJAMA誌の研究結果を見てみましょう。
この研究の概要とグラフを見てください。
- アメリカ人(40歳以上、平均56.8歳、女性54%)
- 約5000人をおよそ10年間追跡
- 死亡率を測定

JAMA 2020;323(12):1151-1160より引用
グラフA 男女別の死亡率と歩数の関係
縦軸:全死因死亡率
横軸:1日の歩数
グラフB 年齢層別の死亡率と歩数の関係
縦軸:全死因死亡率
横軸:1日の歩数
(学術論文の簡単な読み方は別記事をご覧ください。)
上のグラフは、全死因死亡率といって、原因に関係なく
何人亡くなったのかをみていますが、ほかの解析(二次解析)で、
心血管死亡率とがん死亡率も計算されています。
このグラフと解析結果から言えることは:
- 男性よりも女性の方が死亡率が低い
- 年齢が低い方が死亡率が低い
- 歩数が多い方が死亡率が低い
- 8000歩と4000歩を比べると、死亡率が51%低い
- 12000歩と4000歩を比べると、死亡率が65%低い
なので、この論文の結論は:
『歩数が多い方が死亡率が低い』
歩くスピードは関係するのか?
ちなみに、この研究データの別解析で、歩くスピードと死亡率も
調べられていますが、死亡率に関係はありませんでした。
さて、この部分については議論の余地がありそうです。
実は、『歩くスピードが速いと死亡率が低い』という研究は
過去にいくつも発表されているのです。
2011年にJAMA誌に発表された研究では、高齢者(65歳以上)では、
歩くスピードが毎秒0.1メートル早くなるごとに、
死亡率が12%低下するというおどろき!の報告があります。
また、中年(40歳代)の歩行スピードが老化の早期発見につながる
可能性を示す研究もあります。
歩行スピードは運動のホットトピックなので、研究デザインや
ターゲット層、見たい結果(寿命、身体機能、脳機能など)によって
いろいろな切り口の研究が今後も発表されていくでしょう。
何よりも、ウエアラブルモニターが進化していますので、
その膨大なデータ(ビッグデータ)を処理できるAIの発展と相まって、
より現実を反映した研究が出るのがいまから楽しみですね。
まとめ
というわけで、気軽にできるウォーキングは、『歩数』が一つの目安になる、
という話でした。
健康寿命を伸ばすメリットは8000歩以上になりそうです。
この研究の大事なポイントが、歩数さえかせげれば、
『どんな歩行でも構わない』
という点です。
つまり、日常生活レベルの歩行でよいのです。
とにかく歩けばよい。
全く動かないレベル(4000歩程度)から、ちょっと動くレベル(8000歩程度)に
なるだけでも、死亡率が半減するという事実を知ると、だいぶ歩くことに
関するハードルが下がりますね。
いかがでしょうか?
健康習慣として、歩数を意識してみませんか?
ウォーキングとわざわざ意識するまでもなく、
日常生活で歩くように工夫するだけです。
これならば、気軽に始められますね!
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