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ライフスタイルのみで冠動脈プラークを撃退できるか?

Lifestyle Heart Trial Ornish et al. JAMA 1998;280:2001-2007

LM (Lifestyle Medicine) では可能な限り

科学的根拠(エビデンス)をもとに

推奨する内容を決定しています(*)。

* EBM(Evidence-Based Medicine)と呼びます。

* EBMの基本については別記事をご覧ください。

何を科学的・統計学的に証明したのか?

過去、現在、未来にどのような意味をもつのか?

試金石となった研究を読み解きます。

Lifestyle Heart Trial の位置づけ

LMの巨人、Dean Ornishの主導した

1990年代を代表するLMの研究。

規模 (N)が小さい、施設数が少ない、

標準治療が現在とは異なる、などの批判が

あるものの、科学的根拠に基づく医療(EBM)の

夜明け(黎明期)に先駆けて行われた研究としては

質が高く、その後のLMの試金石となりました。

Lifestyle Heart Trial の背景

Lifestyle Heart Trial (以下LHT)は、

Intensive Therapeutic Lifestyle Change (ITLC)

の冠動脈疾患に対する効果をみた研究です。

すなわち、

『治療的ライフスタイル介入によって、

冠動脈の動脈硬化が退縮(縮小)するのか』

を検討した、ランダム化比較試験(RCT)です。

治療開始1年後と5年後に評価を行い、

ITLCの持続可能性も評価しています。

Lifestyle Heart Trial の方法

いつ:1986年〜1992年

どこで:アメリカの大学病院(2施設)

誰が:Dean Ornish (筆頭著者)

誰に対して:48人の中等度−高度な冠動脈疾患患者

何を:ITLCまたは標準治療

どのように:ランダムに割りつけ

何をみた:

  • ①1年後と5年後のライフスタイルの維持率
  • ②冠動脈造影によるプラーク退縮率
  • ③心イベント発生率

治療的ライフスタイル介入(ITLC)として:

①脂質摂取量10%のベジタリアンダイエット

②有酸素運動

③ストレスマネジメント

④禁煙

⑤グループによる心理・社会サポート

Lifestyle Heart Trial の結果

Lifestyle Heart Trial Ornish et al. JAMA 1998;280:2001-2007 より引用・一部改変

ITLC群:

  • 71%(28人中20人)が治療的ライフスタイルを維持
  • 冠動脈狭窄部の直径が5年で3.1%改善(相対的7.9%)
  • 25件の心イベント発生

コントロール群:

  • 75%(20人中15人)がライフスタイルを中等度改善
  • 冠動脈狭窄部の直径が5年で11.8%悪化(相対的27.7%)
  • スタチン非投薬群で狭窄部径が19%悪化(相対的46.7%)
  • 45件の心イベント発生(相対リスク2.47)

Lifestyle Heart Trial の私的解釈

一般的な解釈:

この研究のもつ意味は、1990年代当時と、

2010年以降とでは大きく異なると考えます。

肥満率が年々上昇し、心血管疾患により死亡が

うなぎ上り、社会現象化した1980年代アメリカ。

医療とビジネス(製薬会社)は切っても切り離せない

関係ですが、EBMの時代の幕明けとともに、

エキスパート(いわゆる教授などの権威)に

クスリを宣伝してもらう時代から、

エビデンスをもとに経営戦略を立てて

クスリを売る時代へと変遷しました。

この時代は利益相反の概念がまだ浸透しておらず、

製薬会社に有利なデータばかりが公表されていた

という側面もあります。

そんななか、LMの手法で『クスリに頼らずに』

冠動脈疾患をリバースする可能性を示した

この研究の意義は当時としては画期的で、

そして残念ながらビジネス的には美味しくない

結果であったと推測します。

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